素人が裁く側になるということ
私が裁判員でも、卑劣な犯行をした犯人に同じようなことを言ったかもしれません。
強姦致傷被告に裁判員「むかつくんですよね」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091119-00000619-yom-soci
裁判員制度のそもそもは、「裁判に一般の人の感覚を取り入れる」ということ。
だとしたら、私は、この裁判員のこの言葉も一般の人の感覚だと思う。ただし、被告人質問の場で行うべきではない。
被告人質問は、被告に対して犯行の事実関係を質問して、明らかにし、本当に被告が犯人なのか、矛盾がないかを確認するための時間のはず。
そこで、「むかつく」という発言は、裁判員個人の主観であって、事実関係や犯行経緯、犯人の情状を判断するための質問として妥当なものとは思えない。
しかしながら、その手前の
午前中の被告人質問で、男性裁判員が「この裁判は面倒くさいと感じますか」と尋ね、被告は「自分がやったことなので仕方ありません」と答えた。さらに「捕まって運がなかったと思いませんでしたか」「思いません」などのやりとりがあった。
男性裁判員はさらに「検事の質問に当たり前の答えしか返ってこない」「反省するのが一番じゃないですか」などとたたみかけ、被告が無言のままでいると、「むかつくんですよね。昨日から聞いていて」と、大声を出した。
この質問は被告の情状面を判断するためには、アリだと思う。
本当に反省しているのか、被害者に対してどういう気持ちでいるのか。これは量刑判断においては重要な要素だと思いますね。
だからこそ、一線を越えた「むかつく」という発言で、裁判官が制止をしたのは妥当だと思うんですよ。
その手前までは被告人質問の範疇で、「むかつく」という発言は主観であるから、プロの裁判官が発言を制止して暴走を防ぐのは裁判の秩序維持として適切ですね。
——
冒頭に書いたけど、私もその立場で、被害の状況を検察が述べて、犯人の態度を見て聞いたら、ここまで書いたような冷静に考えられるのだろうか。
強姦致傷の被害者の心情を想像し、苦しんでいるであろう被害者。それに対して、型どおりの答えしか返さない被告。
卑劣で被害者の人格を踏みにじる犯行と、その被疑者を見たら、私も思わず言ってしまうかもしれない。正義感が強い人ほど、我慢ならん!となるのではないだろうか。
だからこそ、職業裁判官が冷静に判断して、適切に進行をすることが求められると思う。
でも、一方で、職業裁判官だって、冷静とは思えない時もあるけどね。先日のシャブピー…じゃなくて、のりピーの裁判の判決の時には、量刑を言わせるという羞恥プレイをしてたくらいだし。
あれは被告人質問ではなく、判決言い渡しの後の説諭の時だけど、まー、やり過ぎと言えばやり過ぎだと思うし。
今回の「むかつく」発言も説諭の時であれば、また違った反応だったのかもしれない。