切れる社長だな

世の中の経営者は、この社長に見習うべきことが多いのではないでしょうか。

なぜトヨタより先に決断できたのか―日本電産社長 永守重信
http://news.livedoor.com/article/detail/4008101/
http://president.jp.reuters.com/article/2009/02/07/B8768556-F35E-11DD-A13D-8FE03E99CD51.php

livedoorニュースのタイトルの付け方がへたくそですね。

日本電産社長の"規則正しい生活"」って、記事の主たる内容を示すものではないでしょう。

実は、見習うべきところは、livedoorニュースの記事部分ではなく、続きにある。大きくわけると4つだ。

1.トヨタよりも先に業績が悪いことを公表したこと。

2.そのために会見場をキャンセルして前倒しした。

3.そのためのコストはかかった。だが、時間を金で買う必要があった。

4.雇用は守る。その代わり、賃金を0~0.5%下げる。ただし、下がった分は業績回復時のボーナスで補填する。と提言し、労働組合も支持。

1.はタイミングの重要性である。もし、同日かそれより後なら、「トヨタ(ほどの企業)ですら赤字なんだから、うちは仕方じゃないじゃないか」という言い訳を与えてしまう。これでは、危機意識が芽生えない。

最近、私が社内のブログやメールでのやり取りで、

「とにかく情勢は厳しいぞ。生存競争が起こるぞ。その時に備えて力を付けよ」

と繰り返し書いているのは、とにかく危機意識が欠如しているから。正社員であることの安住、自部門には関係ないと思う無関心、その油断が命取りになることを理解していない。バブル後の締め付けから、さほど緩めていない状況で、さらなる締め付けが起こるのだから、何が起きてもおかしくない状況なのだ。

ただし、危機を煽って不安にさせるだけではダメで、何をすべきか、どうあるべきかというビジョンを示すことが人の上に立つ人間には必要だと思う。不安を煽るだけなら、無能なマスゴミと同レベルだ。ビジョンを示し、少なくとも、自分の部下や自分が目をかけている人間だけは生き残るように指導していくようでなくてはいけない。

そのための危機意識である。恐怖政治の道具にするようでは、指導者(経営者)失格である。

2.は、1.を実行する実行力だろう。

3.は、1.を実現するための決断である。私もこの考え方をしばしばする。「時間を金で買う」という概念は時として必要な発想なのだ。

路線バスを待っていたところに空車のタクシーが通った。運転手さんはバスの時刻を知っていたようで、

「お客さん、もう少し待ったらバスが来たんじゃなかったの?」

と言う。私は、

「いや、バスを待っていたら、駅で快速列車には乗れないと思います。あのバス(会社)はギリギリに到着して乗れないこともあります。」

運転手さんは、

「でも、そのためにタクシーなんて・・・。まー、うちは儲かるからいいけどね。」

と言う。私は、

「いえ。私はタクシーに乗るというより時間を金で買ったんです。もし、あそこで快速列車に乗り遅れれば目的地の到着時間は30分以上も遅れることでしょう。その違いから出る余裕や効率性を考えれば、安いものです。」

運転手さんは、

「そりゃ、お客さんが余裕があるからですよ。」

と言い、笑った。

だけど、これは違う。余裕があるなら、鈍行列車でのんびりやればいいんです。でも、のんびりやっている余裕がないから時間を金で買うんです。

大きな目的を達成するために、目先の金を有効に使うともいえるのです。

大きな目的があるにもかかわらず、目先の金にこだわるようではいけないとも言えるでしょう。

私の場合は、時間を金で買うことで、列車遅延などの不測の事態に対するリスクヘッジと精神的な余裕から生まれる利益のほうが大きいと判断しているからである。

4.は、私が常々書いていることなんですよ。バブル後に従業員を締め付けるだけ締め付けておいて、いざなぎ超えの好況の時に(申し訳程度しか)還元してこなかったでしょ。その上、希望退職を募集したり、組織を切り売りしてみたりして、これで従業員が忠誠を誓ってくれると思ったら大間違いだと思うんだよね。

「今は苦しいから、俺も我慢する。だから、皆も我慢して欲しい。その代わりに、ここを乗り切ったら、皆に褒美を出す。」

って、当たり前のことなんですよ。だけど、その当たり前のことを

「株主への対応が大事だ」

とか、

「いざという時のために内部留保が必要」

とか、言い訳ばかりする。

じゃあ、いざという時の内部留保は、今、使う時期だろ?と。なぜ、

「内部留保を取り崩してでも、雇用は守る。だから、苦しいが皆頑張って欲しい。頼む。」

と頭を下げられんのか。

そして、バッサバッサと事業所閉鎖だの、人員削減だのやってしまう。

いい加減に従業員も馬鹿じゃないから、

「会社は(俺たちを)守ってくれない。会社なんか、信用できない。」

って思う。だから、少し前の記事じゃないけど、副業を考えたり、実際にやり始めている従業員が出てくるんじゃないか。

社員を縛り付けておきたい(専属契約)なら、それなりの報酬が必要だろ?と。スポーツ選手の専属スポンサー契約や、AV女優だって、専属の場合は待遇が違うんだから。

この社長は、本当に大事なものが何かよくわかっていると思うね。それが示されているのが、

自慢ではないが、貧しい農家で育っただけに、私は社員の誰よりも人の苦しみを知っている。一般の従業員がどれだけ解雇を心配しているかもよくわかる。だから、そんな恐ろしいことを私は絶対にしない。堀を埋められ城壁を壊されても雇用だけは守り抜く。当社にとって「雇用は天守閣」なのである。

という部分だと思う。自分自身の経験もそうだけど、「雇用は天守閣」と言い切るくらい、従業員を信用し、大事にしているのだろう。

だから、従業員もそれに応えようと頑張るのではないか。こういうのを古臭いと言う人もいるだろうし、欧米流とは違うから、否定的に捉える人もいるだろうけど、私は、この考えのほうが好きだな。

私も「企業は人なり」「人材ではなく人財」という思考だ。仕事人・企業人である以前に良い人間であることが大事だと思うし、どんなに仕事ができても良い人間でなければ、仲間に迎え入れるつもりはない。私が自由に組織を編成するなら、そうしてしまう。

それと、この2つの段落も、私と考えが一致する。

生き残るための大前提は、生産性を上げること。いまの日本企業は「残業体質」に陥っている。生産性の低い人ほど長時間残業しているので収入が多い、というのはおかしな話である。フランスの会社(ヴァレオ)を買収してみて驚いたことがある。5時すぎに会社を訪ねると従業員はみんな退社していた。彼らは「時間」ではなく「成果」で評価される。だから定時に帰り、家族で夕食をとったあと、持ち越した仕事があれば自分の部屋で片付けるという。

私は欧米流の経営よりも終身雇用・年功賃金の日本的経営のほうが優れていると思うが、こと生産性に関しては、彼らのやり方を参考にしてもいいのではないだろうか。

私は残業が大嫌いだ。ほぼ常に定時上がりである。(さすがに定時ぴったりで帰るのは気が引けるので30分程度はいるけど。)

残業をしなければ、飲みに行くことも、ブログを書くこともできる。残業をした日は時間に余裕がなくて、仕事マシーンになった気分で、人生にうるおいが欠けたような気になる。

では、私はパフォーマンスを出していないダメ社員かと言えば、決してそんなことはない。仕事も計画どおりに終える。むしろ、計画より早く終わることのほうが多い。こう書くと仕事が少ないように思えるが決して、そんなことはない。

私の場合、自分で完結させないといけない仕事が多い。何でも外注(派遣社員や請負で常駐している人員)に投げて、任せっ切りというわけじゃない。

時には他の担当者の件で、クレームらしき相談を聞けば自分が介入して、問題が拡大する前に解決してしまうこともある。

技術的な知識に加えて社会動向や社内動向も見ているため、参謀的な役割を果たして課内運営が円滑にできるよう補佐・アドバイスすることもある。

外部に頼める部分は頼んで、自分のリソースの使用を少なくする。そこで生まれた余力で社会動向・技術動向・社内動向を分析して、提言をしたり、相談に乗ったり、全体を広く見回していく。

あとは、スピード感だな。とにかく早く終わらせる。終わったら、バックグラウンドジョブとして、分析(+予測)やレポートを進めておく。レポートは分析によって出る予測から必要だと思うものだけ作るので、比較的採用されることが多い。無駄なことをしないから、スピードが出る。

そんなこんなで社内ブログを読みたがる人や、レポートを読みたがる人は結構いるんだけど、利害関係者が違うとある一方には利益でも、一方には損失というケースもあるので、全てを読ませることはないんだよね。個別に最適化されたものを出してますから。

全ては私の脳みその中にあり。ということで。

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