余剰キャベツ廃棄
農作物が豊作になると、余剰作物をトラクターでつぶして廃棄するという話題が出てきます。
本当にこれって、どうにかならないんですかね。
農家の方が丹精込めて作った作物。本当は消費者に届いて、「おいしい」と言われて食べられるはずだったものを、自ら廃棄する。どんな気持ちなんですかね…。
ところで、どうして農家が廃棄するか理解していない人のために、簡単に解説しときましょ。
モノの値段は需要と供給で決まります。例えば、ダイヤモンド。キラキラ光って綺麗なので、みんなが欲しがりますね。みんなが欲しがる度合いが需要です。ダイヤモンドは天然の鉱石を加工したものです。この鉱石が簡単には見つからない。だから、たくさん作れないのです。たくさん作れないという度合いが供給です。
みんなが欲しいものは、高くても買います。
例えば、ネットオークションで、人気アイドルのサイン入りの本が本の定価よりも高くなるのは、サイン入りの本の供給が少なくて、みんなが欲しがる(=需要)が多いとき、値段が釣りあがります。
キャベツの場合は、これとは逆で、みんなが欲しがる度合いは例年どおりです。需要は大きく増えているわけではありません。なのに、作物がたくさんできた。供給は過剰なのです。そうすると、さっきのネットオークションとは逆で、値段が下がっていきます。同じ値段では売れる数も同じ程度なので、安くして、もっと売れるようにしようとします。
これが、需要と供給での価格決定のメカニズムなのです。ところが、農産物でもダイヤモンドでも、工業製品でも、モノには原価があります。原価は商品そのものの価値ですね。これに利益や売るための費用を上乗せして、利益が出る理想の売価が決まります。
今回、市場で売れる値段が原価を割ったり、利益がほとんど出ない状態になったから売れば売るほど赤字になります。
そして、供給が過剰だから値崩れしているので、供給を例年通り程度までに戻せば、値崩れを防げます。だから、トラクターでつぶして廃棄しているんです。
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勘のいい人は、もうわかったと思いますが、需要は変わらず、供給過剰だから値段が下がったので、需要が増えていれば値段は下げ止まるのです。
そうすると、キャベツを廃棄しないで済む方法は、みんなが欲しがればいいんです。
その方法は…。
1.みんなが必死に食べる。
キャベツの千切り、ロールキャベツ、キャベツの炒め物などなど。でも、これにも限界がありますよね…。
2.キャベツを加工して長期保存する。
生のキャベツだと冷蔵である程度しか保存できませんが、加工して冷凍したり、レトルト食品にするなどして保存すれば、将来、不作の時はこれを食べれば良いのです。
ただ、これも食品を加工する会社も在庫を抱えれば倉庫代がかかるし、加工できる能力にも限界があるから、うまくいかないもんですね…。
3.新しい需要の開拓
例えば、家畜の飼料にするとか、牛乳が余ったときに生まれたホワイトカレーだか、ミルクカレーのように、新しい料理を開発しちゃう。
個人的には、カレーライスにキャベツの千切りって好きなんですよ。野菜もとれるし、味が程よくマイルドになる。キャベツをたくさん食べるなら生より火を通したほうがいいですね。
4.農業の構造改革
日本の農政って、米偏重なんですよね。米については政府が買い上げたり、外国から米を買い取ることで値崩れを防ぐミニマムアクセスというものがあったりします。
今回はキャベツですが、米にこれだけ力を入れているのなら、他の産品についても支援を厚くすることで、転作を促すというの方法もあるのではないでしょうか。
供給過剰になる作物を減らして、違う作物を育ててもらいましょうというのが、このアイデアですね。
5.いっそのこと輸出してみては
日本の農産物の安全性が高いことは有名なんですね。それでいて、おいしい。
中国の富裕層あたりは、値段がかなり高いのに日本の農産物を買っています。米だけでなく、りんごなんかも売っているんですね。
だったら、いっそのことジャパンブランドとして、海外に輸出してみたらどうでしょうか。うまくいけば輸送コストを上乗せしても、原価と利益が確保できるかもしれません。
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最後の輸出なんかは、生産者が考えても、どうやって実現したらいいかわからないと思うんですよね。販路もないし、通関手続きもわからないし。
補助金を出す農政だけでなく、販路を開拓したり、通関手続きを支援することで、日本の農業の国際競争力を高めることも大事な支援だと思います。
もちろん、民間企業が販路を見つけて、輸出手続きを行って、手数料をもらう方法で自社の利益を得る方法もあると思います。これが可能なら、役所に頼らないで済みますからね。
りんごや穀物に比べて、葉物野菜ってデリケートだから、輸出って難しいのかな…。
食の安全の問題が色々出ていますが、日本の農産物は安全で質がいいので、安い輸入物だけでなく、日本の農産物を選ぶようにするといいんですけどね。
そして、地産地消という言葉があるように地元の産物を地元で消費すれば輸送距離が短くなり、輸送で出てくるCO2も減らせます。これも大事なエコなんですよ。
…ということで、今夜のおかずにキャベツはいかがですか?
余剰キャベツ 25トン廃棄「さみしい」 北海道・南幌
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080920-00000000-maip-soci