リーマン破綻から世界同時株安の脱出法
リーマン・ブラザーズが破綻して、世界各地の株式市場が大幅下落となっている。
日本も前場(午前の取引)では600円以上下げている。
このままだと、日経平均で10000円台(現在は11000円台)をつけるだろうし、アメリカ経済の混迷が長引けば8000円程度まで落ちても不思議ではない。バブル崩壊後には、そのくらいまで下がったから、前例がないわけでもない。
早くも日銀が1兆5000億円の緊急オペレーション(公開市場操作)を行っている。確かに急速すぎる経済の悪化は、予想外の事態を引き起こすので、緊急オペは適切だろう。
リーマン破綻、日本でも似たようなことがあったと思う。山一證券の破綻だ。
その後、都市銀行の一つだった、北海道拓殖銀行の破綻、不良債権が底なし沼のように銀行の体力を奪う事態となり、とうとう公的資金の投入とゼロ金利による量的金融緩和でバブルから脱却した。
さて、サブプライムローン問題に端を発した信用収縮問題だが、これはもう大胆かつ、同時進行でいくつかのことを進めるしかないだろう。
サブプライムローン問題は、そもそも、実態が見えにくいことが問題なのだ。少しおさらいをすると、サブプライム層という、経済的にあまり信用度が高くない人に貸付をしたローンがサブプライムローン。このローンは、最初は低金利の利息だけを支払うような状態で、数年後に元利を払うようになる。この時、貸付金利も上がる。
さらに悪いことに、アメリカの場合、借金で建てた自宅を担保としてお金を借りていく。アメリカ経済が右肩上がりを続けているうちは、担保価値も上がる。だから、どんどんお金を借りることができる。まさに、日本で経験したバブルそのものだろう。
実は、日本でも似たような貸付制度があるので、日本版サブプライムローン問題が発生するかもしれないという話もあるが、これは別な機会にしておこう。
このサブプライムローンのリスクを分散させるために、色々な金融商品にサブプライムローンの債権を混ぜ込んでしまった。
松坂牛セット10枚入りとして販売した中に、9枚が松坂牛で、あと1枚がクズ肉を混ぜたようなもんだと思っていい。
いわば、金融商品のミートホープみたいなものだ。
ところが、サブプライムローンでは、数年後に元利を払うようになる。低利の利息だけなら支払えた人が、高利や元利を払うようになった段階で支払いが困難になってしまった。そして、破産する。当然、破産をすれば信用会社が代位弁済することになる。この信用会社をモノラインと言う。
実際のサブプライム層のローン残高など、たかが知れているはずなのだが、金融商品のミートホープが全世界にばら撒かれたために、皆、自分が保有するファンドも危ないんじゃないかと警戒する。そうすると、みんな慌ててファンドを売ってしまう。これが信用収縮である。
さて、そうすると何をすべきか少し見えてくる。
1.各ファンドにどの程度サブプライムローンの債権が含まれているか明らかにする。
2.危ない会社は、さっさと潰すか、どこかに引き取ってもらう。
3.危険性の高い銀行には躊躇せずに公的資金を投入する。
この2つだろう。
1.は、今の説明の通り。皆が疑心暗鬼になるから恐いのであって、実像をクリアにすれば、幽霊の正体見たり枯れ尾花なのである。
そうすれば、危ないファンドと健全なファンドの区別もできる。
2.は、今の状況は危ないファンドと健全なファンドがあるのだが、疑心暗鬼になって、全部危ないと思っているところがある。同じように、危ない会社はさっさと潰すなり、バラ売りするなりして整理してしまったほうが市場の不信感を払拭できる。
日本でも、2.は、公的整理という方法が取られていたので、それと全く同じことだろう。
3.は、日本でもやったこと。公的資金注入である。この決断は、早ければ早いほうがいい。
遅れれば、どんどん健全だった債権まで不良債権化する。
そして、早いほど立ち直りも早くなる。
日本のバブルそのものだから、ほとんどの対策は当てはまる。違うのは、1.の部分だろう。これには時間がかかるから、速やかにやるべきだし、健全なファンドは早くそのことを伝えたほうがいい。
2008/09/17 00:47追記
<米リーマン>米政府、淘汰加速 「失われた10年」教訓に
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080916-00000139-mai-bus_all
どうやらリーマン・ブラザーズは山一證券と同じではないとのことですね。
私の記事本文で言う「危ない会社は、さっさと潰すか、どこかに引き取ってもらう。」を実践したみたいですね。
また、リーマン。ブラザーズ破綻についてはこんな記事も。
公的支援拒否されたリーマン、ドル防衛“人身御供”に
http://netallica.yahoo.co.jp/news/48592
リーマンを救済すれば、アメリカの財政赤字膨張する。結果、ドルが安くなる。だから、公的支援を拒否されたというワケらしい。
でも、そうすると、ベア・スターンズがJPモルガンに救済合併した時にはFRBが300億ドルの特融実施で合意したんだから、一貫性がない。だったら、ベア・スターンズの時点で、退場すべき企業は退場させるべきだよな。私企業が自らの意思で合併するなら別だけど、特融付きってのはフェアじゃないよな。
アメリカ当局も、ベア・スターンズの時よりも厳しい状況認識で方針転換したのかもしれないが。