コムスン問題

コムスンの問題が大きくなっている。
私のブログは社会人だけでなく、学生の方(それも中高生が多いようだ)も読んでいるので、簡単に事実をまとめつつ、意見を述べていく。

1.問題の発端…不正受給
コムスンは、訪問看護ステーションに実際に勤務していない職員を勤務していると偽って申請し、介護事業所の指定を受けていました。
この不正受給の後、お金の返納を命じられました。また、県は、介護事業所指定取消処分を下す準備をしていましたが、問題の事業所は廃業届を提出し、処分逃れをするなど、悪質な企業対応が問題になっていました。

この不正受給が1事業所や2事業所という一部の事業所が独断で問題を起こしたのではなく、会社が意図的に行ったと判断されました。そこで…

2.厚生労働省が都道府県に「コムスンを指定事業所として認めるな」と通知
あまりにも、デタラメなことをしていたコムスンは、とうとう厚生労働省を怒らせてしまいました。
その結果、各都道府県に対して、「コムスンを介護事業所として指定するな」という通知(正確には、新規の事業所申請および6年毎の事業指定更新を行わないこと)が出ました。
これは、実質的に営業困難を意味します。

3.ところが…問題も。
(1)コムスンは介護事業でも規模が大きいため、2008年4月以降にコムスンの穴を埋める事業者が必要なこと(報道では、「受け皿」と言われています)
(2)24時間訪問介護を扱う事業者が少なく、夜間の介護を必要とする人がサービスを受けられなくなる事態が発生しそうなこと
(3)現在、コムスンで働いている人が失業してしまう可能性があること。
(4)何より今まで、慣れ親しんだ介護者のサービスを受けられなくなる利用者の心理的な動揺
…と言った問題も指摘されており、各都道府県は対応に追われているのが実情です。

4.その一方で過酷な勤務実態、介護保険制度自体の問題も明らかに
コムスンでの過酷な勤務、24時間訪問介護対応は事業所任せ(現場任せ)という実態も徐々に出てきており、介護事業の構造的な問題も出てきています。
とにかく、きつい、汚い、給料安いのいわゆる3K職場である一方、少子高齢化時代で介護需要は増えているため、人員の確保の難しさ。
このため、少ない人員で多くの人をケアする必要があり、過酷な勤務になってしまう。という実情があるようです。
また、介護保険制度が頻繁に変わることによる問題や事業者がなかなか利益を出しにくい問題も明らかになってきていて、コムスンの不正受給は問題だが、制度の運用にも問題があるのも事実です。

5.ところが!
コムスンの親会社、グッド・ウィル・グループは、コムスンの事業を傘下の別の介護子会社・日本シルバーサービスへ事業を譲渡するという発表がありました。
コムスンは行政処分によって、実質的に営業できなくなるので、それを別な会社にそっくりそのまま代えちゃいましょうというものです。
しかし、先に書いた不正受給の処分逃れと同じような行為であること、何よりも不正を起こした企業グループへの事業譲渡であることから、あちこちから批判が出ています。

和歌山県知事は、「国が認めたとしても県は譲渡先企業の申請を許可しない」と毅然とした態度を示しました。
また、厚生労働省も譲渡の撤退を迫っています。

以上が、コムスン問題の概要です。
その上で、私のコメントは、
1.不正受給は許されない。処分は当然のことである。
2.その一方で、厚生労働省は通知をする前に影響を考慮し、問題を回避するプランを練っておく必要があったのではないか。
3.その一方で、介護事業は利益が生まれにくい構造で、このままでは、介護事業をする事業者がいなくなる可能性もある。利用者の金銭的負担と企業が存続できるレベルの利益とのバランスが取れる施策を望む。
4.コムスンと営業エリアが重なる介護事業者は、コムスンで働く人の採用を検討してもらえないだろうか。これで、雇用の問題はある程度解消できないだろうか。
5.コムスン以外の事業者がいない地域(特に地方で多いと聞く)では、元コムスンの従業員が働けるように新規事業の手助けを行政、商工会議所、金融機関がしてもらえないだろうか。
6.介護保険制度そのものの運用については、現場の声をよく聞き、利用者・事業者・自治体の三者にとって良いものにする必要がある。本問題の根本部分に制度の問題があることを忘れてはならない。
7.事業譲渡の件については、和歌山県知事の毅然とした態度を全面的に支持する。違法・脱法行為を平然と行う企業が利潤を得るようなことはあってはいけない。これは、社会正義として必要だ。その一方で、利用者・コムスンで働く善良な従業員が困らないような対策も都道府県には強くお願いしたい。(対策案については、前項までにいくつか書いている。)
8.人員不足については、海外からの人員の受け入れをもっと積極的に行ってはどうだろうか。言葉の問題はあるかもしれないが、補助的な業務でも割り当てることで、過酷な勤務の緩和につながらないだろうか。補助業務をしつつ、言葉を覚えてもらって、主力にもなれるような受け入れ体制を作ることも検討できないだろうか。
9.グッド・ウィル・グループについては、社会的な制裁をもっと受ける必要がある。系列企業の利用拒否など、我々ができることはあるはずだ。ちなみに、私のサイトでは、バナー広告を除去することをまず最初に行った。

問題から少し離れるが…。
近年企業の社会的責任(CSR)とかコンプライアンスという言葉をよく聞くだろう。企業の社会的責任には、コンプライアンス(法令遵守・倫理的に正しい行動)が最低限であり、その上に、地域・株主・顧客・従業員などのステークホルダー(利害関係者)に対して、さまざまな形で責任を負うことを求められている。

グッド・ウィル・グループは、その最低限の法令を守ることさえもできなかっただけでなく、見苦しい脱法行為として、処分逃れを行い、さらには事業譲渡という形で延命しようとする。
もし、本当に反省し、責任を最後まで取ろうとするならば、他の大手に従業員の受け入れのために、頭を下げて回るなり、別の方法があったはずだ。
私には「雇用の確保のため」という言葉は、方便にしか聞こえない。

このような企業体については、厳しく非難されるべきだ。
その一方で、圧倒的大多数の従業員には何の罪もない。
むしろ、懸命に介護をしてきたことだろう。

どうか、元コムスンということで、差別などがないようにして欲しいものだ。

コムスン問題” に対して1件のコメントがあります。

  1. コムスンと厚労省―喧嘩するより先に必要なこと

    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070613-00000010-mailo-l21
    コムスンの介護報酬不正受給問題がつとに世を騒がせています。
    簡単に言えば、コムスンが架空の事業所を各地に存在するかのように書面上見せ掛けて、自治体からの介護報酬を不正に受け取っていたという……

  2. daigan より:

    おっしゃること、ごもっともだと思います。
    でも、介護給付のお役所仕事的な側面にも原因がある気もします。
    もしよろしければ、私のブログに記事を書いてみましたので、ご意見くださると幸いです。
    ※URLの記載がありましたが、削除しました。

  3. 電池マン より:

    ブログに記事を書いているとのことですが、当方では、自発的にブログやニュース記事を見て記事・コメント・トラックバックを行うことはあっても、このような形で投稿をされたものについて、それを閲覧し、意見をすることは拒否させていただいています。

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