光市母子殺害事件、被告に死刑判決

当然の結果だと思う。だが、ここに至るまでには、いくつもの前例を越えなければ、この判決は出なかった。

  • 新しい死刑基準を生んだ

改めて事件を振り返る必要があるだろう。

1999年4月14日、山口県光市の本村さん宅に配水管検査を装ってあがりこみ、母親(当時23歳)を強姦目的で襲ったが抵抗されたために首を絞めて絞殺。泣く娘(当時11ヶ月)を床にたたきつけた上、首に紐を巻きつけて絞殺した。被告は当時18歳であった。

一つ目のハードルは被告が当時18歳で未成年だったことから、死刑を適用するのが容易ではなかった。

二つ目は、殺害された被害者の人数が2人であることだ。

永山基準では、9つの項目を判断基準としている。

1.犯罪の性質→強姦致死、抵抗することの出来ない幼い子供を殺す残忍さ。

2.犯行の動機→強姦を目的とした自己中心的な動機である。

3.犯行態様(殺害方法の執拗さ、残虐さ)→泣く子供を床に叩き付けた上に絞殺と残酷極まりない。

4.結果の重大性(殺害被害者数)→2名。(過去の判例では、4名以上でないと死刑が出にくい。ただし強盗や略取誘拐では1名でも死刑が出ている。)

つまり、ここが基準でもネックだった。

5.遺族の被害感情→後述。

6.社会的影響→これだけ騒ぎになっているのだから、影響は大きい。少年であること、犯行の残忍さ、身勝手さなど社会を震撼させた。

7.犯人の年齢→18歳。これも基準ではネックだった。

8.前科→なし。これも基準に適合しない。

9.犯行後の情状→友人へ宛てた手紙で被害感情を逆なでするような内容があったとされ、反省をしているとは到底言いがたい。

…と、死刑判決の基準として用いられる永山基準では、全てを満たしているとは言えず、これをそのまま適用すれば死刑ではなく無期懲役だった。

こうしたことや、情状酌量理由を加えて高裁では、無期懲役としたが、最高裁が実質的に「死刑相当」として差し戻しをしている。

さらに差し戻し審では、荒唐無稽とも言える発言を繰り返し、被害者や被害者遺族に対して本当に反省し、罪を償うとは思えなかったことも死刑判決につながったのだろう。(弁護側にも問題があるのだが。)

従来は死刑は例外的に下されるものであった。だが、最高裁が「特に酌量すべき事情がない限り、死刑の選択をするほかない」と判示していることから、原則的に適用するものとなった。

今までの永山基準から、今回の判決によって新しい基準が作られたと言っても過言ではない。それくらい、画期的な判断だと思うのだ。

  • 犯罪被害者重視への転換

これまで、犯罪被害者はその心情を裁判の場で陳述することができず、傍聴も普通の抽選だった。

だが、近年になって犯罪被害者を重視する方向に動き、裁判の場で意見陳述ができるようになったり、優先傍聴権が認められるようになった。

こうした流れも厳罰化へ向かわせる要素になったと思う。

  • 裁判員制度との関係

裁判員制度が、裁判に一般市民の感覚を取り入れることを目的としている。

これまでの裁判であれば、前例にそって永山基準を当てはめたことだろう。だが、社会がそれを認めなくなっている。加えて、前項のように被害者感情を重視するようになったこともあり、社会が納得できる判決を出すようになったのだろう。

その一方で、この事件のような場合、加熱する報道が一般市民である裁判員の審理に影響しないかが心配である。

  • 判決前に「生きて償いたい」と被告

少し前の報道で被告が「生きて償いたい」と言っていたようだが。

でも、被害者遺族にとっては、自らの快楽のために強姦を企て命を奪い、抵抗することもできない幼い子供まで殺した被告が、塀の中とはいえ、のうのうと生きていることに怒ると思うのだが。

もし、本当に反省しているのならば、わけのわからん、生き返りの儀式だとか言わずに、正直に真実を話し、それから謝罪をするものだろう。

「生きて償いたい」とは、図々しいにも程がある。人間が生物である以上、生きたいと思うのは当然である。それは、自らの欲望のために殺された2人だって同じはずなのだが。

【光市母子殺害】裁判はこれからどうなる
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000931-san-soci

【視点】光市母子殺害 厳罰化へ踏み出す
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000111-san-soci

元少年に死刑判決、光市母子殺害事件
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000006-omn-soci

光母子殺害 元少年に死刑判決 広島高裁
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000011-maip-soci

光母子殺害 死刑判決…元少年、遺族に一礼
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000016-maip-soci

「真実を述べてきた…」=判決後の元少年-極めて不当と弁護団・光市母子殺害
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000111-jij-soci

【光母子殺害・弁護側会見(1)】「裁判所は被告人の心を完全に見誤った」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000952-san-soci

光母子殺害 官房長官「被害者のこと、あまりに配慮なかった」(会見詳報)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000954-san-pol

<光母子殺害>元少年に死刑判決 裁判長は新供述「不自然不合理」、情状「斟酌する理由みじんもない」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000006-maiall-soci

母子殺害元少年の「理解不能」発言 「死刑制度認める、でも死刑になりたくない」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000004-jct-soci

死刑判決!光市母子殺害~本村洋さんに感銘
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000034-tsuka-soci

光市判決、「主張の全否定はショック」と元弁護人
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080422-00000010-omn-soci

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