「借金で死ぬな!」看板

私の身の回りでも借金問題で大変になってしまった人がいる。

幸い、その人は自殺という選択をする前に私に相談をしてきた。たまたま私は無駄知識の探求者なので、生活に役立たないことも知ってたりするし、今の時代はインターネットで検索することで玉石混交ながら情報を容易に手に入れることができる。

だが、この人は、インターネットを使いこなす人でもないため、ネットで検索するという思考がそもそもない。これもある意味デジタルデバイド(情報活用能力の差がもたらす格差)だろう。

借金をした場合、自殺という選択は全く役に立たないと思ったほうがいい。

少し前までは、消費者金融会社は団体信用保険を自動的にかけて、自殺した場合には、保険金で完済扱いとするか、悪徳な会社なら、債務を相続したものとして、相続人に返済を迫っておきながら、団体信用保険から保険金を得るというケースもあった。

だが、最近の消費者金融を取り巻く環境が厳しくなり、団体信用保険が自殺を助長させているとして、大手消費者金融は保険を終了させている傾向が顕著になっている。

つまり、死んでも債務は残された家族に相続されるだけで(相続放棄または相続の限定放棄という手続きを取るという選択もあるが。)死んだら全て終わりになるわけではない。残された家族は、愛する人を失った悲しみに加え、借金にも悩まされる。不幸の連鎖が続くだけで、何もいいことは無い。

だったら、死ぬ気になって問題を解決すべきだ。

借金問題の解決には、4つある。

1つは、任意整理。これは、最近の契約は大手消費者金融を中心に利息制限法の範囲の金利で貸し出しをしているが、それ以外は、出資法(上限金利29.2%)と利息制限法の間のいわゆるグレーゾーン金利で貸し出している。これを利息制限法の金利で過去にさかのぼって計算し直して、差分を元金返済に充当し、残りについては低利または無利息で返済をしていくもの。場合によっては、計算し直してみて既に完済となるケースや、完済していて余分に支払っている(過払い)というケースもあり、過払いの場合には、返金される。また、既に完済したものも過払い返還に応じるケースもあるし、応じない場合には、過払い返還訴訟(正式には、不当利得返還訴訟)を起こすことにより、実際には、和解を持ちかけてくることが多い。これにより、債務が圧縮されるケースも少なくない。間に消費者金融の関係団体などを入れた場合でも、当事者同士の交渉をアシストするだけで、法的拘束力は、あくまで当事者同士の合意文書とその履行に伴うものに限定される。

2つ目は、特定調停。任意整理は当事者同士の交渉に対して、調停は、裁判所が間に入ります。これも、利息制限法の金利で引きなおし計算をし、債務を圧縮した上で、残債務を計画的に支払うように双方の言い分を聞いたうえで調停案を提示するもの。

3つ目は、有名な破産。破産と言えば、自己破産が有名だが、これは債務者が「もう払えません」と自分で(依頼を受けた書士や弁護士も含む)裁判所に申告するもの。もう一つは、債権者から「こいつは支払う能力がない」と破産申告をするもの。まー、普通は自己破産だが。破産と言えば、差し押さえシールがベタベタ貼られて家も追い出され…というイメージがある人もいるかもしれないが、生活に必要な物品は差し押さえられないし、現金もある程度であれば差し押さえ対象外。ちなみに、銀行口座に預け入れている場合には、20万円までは差し押さえ対象外だが、現金だと90万円程度までは差し押さえられなかったはず。(他に株券、絵画、車などを持っている場合には、換価した金額を財産として算定し、それを超過した分は差し押さえとなる。)ただ、株券などをどうしても手放したくない場合には、相当額を債権者で応分するなどの方法もあるので、何もかも失うというものではない。ただし、破産とは、「裁判所が支払能力がないことを認めた」というだけで、支払う義務は残っている。実際には、免責手続きが必要で、免責が出て初めて債務がチャラになる。免責不許可事由には、ギャンブルや浪費などの借金が該当するが、これも、最初の借金の原因がギャンブルや浪費だっただけで、返済のための借金を積み重ねた場合などは、一部、お金を支払う代わりに免責にしてもらうということもある。この辺の細かい話は、書士や弁護士に相談するか、しっかりと勉強して自分で手続きをしたほうがいいだろう。(ちなみに、書士は小額の債務の場合に限られるなど制限がある。)

なお、破産をしても住民票や戸籍に書かれるわけでもないし、選挙権も普通にある。ただし、破産した場合には、破産宣告者名簿に記載されるし、一部の職業には就業できない。だが、免責が降りた時点で名簿から抹消されるし、就業制限も解除されるはず。(これを復権と呼ぶはず。)

4つ目は、再生手続き。これは、会社更生法の個人版みたいなもの。再建計画のようなものを作って、それを履行することを確約するというもの。破産と異なり、財産が処分されずに済む。個人の場合には、住宅を買ったが住宅を手放したくない場合によく使われる。ただし、再生計画が履行されなかった場合には、破産手続きに直行すると思って良いだろう。

いずれの場合も、与信会社には、事故歴として残るのが一般的なので、まともな会社からは借り入れができないと思ったほうがいい。

もっとも、ここまで大変な思いをしたら、もう借金をしようという気は起きないだろうけど。

…という知識があったので、冒頭の人のケースでは、金融機関名と、契約日、現在の返済額と残債務額を聞きだして、現在の収入と、家計簿(月間の収支状況がわかる程度)を出させて、どの方法を選択するか…ということも出来なくはないが、そこまで首を突っ込むのも面倒だし、人の財産状況を知りたいとも思わないので、一言だけアドバイスをした。

それは…。

「市役所などの広報に法律相談という日が必ず設定されているはず。それを利用しなさい。」

これなら、相談無料か安価なケースが多い。そして、ある程度の規模の市町村なら、毎月定期的にやっているはずで、交通費も小額で済むから。そして、悪徳弁護士がいる可能性はかなり低いので、信頼性が高いことです。

なお、東京圏だと、神田や錦糸町で弁護士会が借金問題センターのようなところを開いているので、ここも確実な相談場所だと思います。その場で、弁護士に依頼することもできたはずです。弁護士に頼むと、即座に金融業者に「受任通知」を送付し、これを受け取った業者は、債務者に取り立て行為をしてはいけないことになっています。取立ての電話や訪問から解放されるので、精神的にも落ち着くことでしょう。

それと、これを読んで借金問題を何とかしようと思った人に、もう二ついい情報を。

1つは、大半の弁護士は、借金問題にかかる弁護費用は、分割払いに応じてくれます。なので、まとまったお金がないと弁護士に依頼できないということはありません。

2つ目は、本当に生活困窮で分割払いにしてもらったとしても払える見込みがない場合には、「法テラス」という組織があります。ここに電話で問い合わせて事情を話してみるのも方法です。この法テラスは、どの弁護士に依頼したらいいかわからない時に、該当する案件に強い弁護士を紹介してくれる機能もあります。

さて、最後にいくつか注意点を。

1.街にある「借金の相談を受け付けます」という看板や、そういう内容のスポーツ新聞の3行広告は悪徳業者の可能性もあるので避けたほうがいいでしょう。

2.「カードで現金」という会社も利用してはいけません。これをやってしまうと、自己破産の場合、免責不許可になる可能性があります。(換金行為とみなされる可能性が高い。)しかも、カード会社もチェックしているので、カード決済ができなかったり、会員資格を剥奪されて即時弁済を求められる可能性もあります。

3.死んでも解決しない。問題を大きくするだけ。だったら、死ぬ気で問題を解決しましょう。ちゃんとしたところに相談をすれば、問題は解決できます。それにね、ヤミ金でもない限り、数百万程度で、あなたの命を狙いませんって。その程度で殺し屋を使ったり、マグロ船に乗せたところで、犯罪として刑務所行きになるのと比べたら割に合いませんから。だから、殺されることも、自分で死ぬこともないのです。きちんと法に基づき、問題を解決すればいいのです。

4.破産や再生手続きをした場合、官報に掲載されるため、ヤミ金などがダイレクトメールを送ってくるケースがあります。また、「うちの会社を債務一覧から除外して欲しい」などと言い出す業者もいるでしょう。でも、応じてはいけません。新たな借金をすると免責不許可になる可能性があります。破産とは再出発をするための手続きであり、再び借金を重ねるような言動をすると不利になる。また、債務一覧から除外すると、債権者平等の原則があり、特定の債権者を優遇したとみなして、これも不利な状況になります。同様に財産を意図的に隠す行動も不利になります。(ちゃんとした弁護士や書士に依頼していれば、このことは説明してくれるはずです。)

しっかし、普通に生活してると、本当に無駄な知識ですよね(笑)

借金で死ぬな!樹海の看板29人救う
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080223-00000028-yom-soci

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