おもちゃメガネの冬休み
昼休み、一人社食で定食を食べる。
荒涼とした会社の中でのオアシスとも言うべき社食であり、つかの間の休息である。
私は4人掛けのテーブルの一席に座る。
もう少しで食べ終わるという時に、おもちゃメガネがやってくる。
こいつ、キモいことに、なぜか俺の隣に来る。
いや、頼むから、斜め向かいあたりにしてくれないかなー。
おもちゃメガネ「あー、もう食べ終わるか。」
そう思うなら、なおのこと、出やすいように向かい側にしてくれないかなー。
こういうところで気が利かない時点で、やはりこの男はこれ以上、出世しないだろうな。(ま、私も気が利かないほうだけど。)
おもちゃメガネ「予算作成作業、来年からはみんなに手伝ってもらおうかな。」
(また、この話かよ。うっせーなー。仕事振るならさっさと振ればいいだろうが。)
おもちゃメガネ「でもな、変な奴に任せると余計手間かかるからな。」
(じゃあ、人を見て振ればいいでしょ)
私は、あえて何も反応しない。こうやって、こいつは、手を挙げるように仕向けているのはわかっている。
「あくまでも、私が仕事を振ったのではなく、自発的にやると言ったのだ」
ということにしたいのだろう。そうやって、自分が嫌われないようにしたくてたまらないのである。
だが、上司という立場ならば、仕事を振るのは当然で、むしろ、問題なのは振った後にサポートをすることと、結果責任を負うのが大事なのだ。
この点で安心できないと部下は仕事を受けたがらない。
相手がなぜ首を縦に振らないか。ならば、その障壁をどれだけ取り除くか。そうして、自分も相手も納得できる着地点を見つけれて仕事を振れば、そこまで嫌がられないと思うのだが、おもちゃメガネにはそういう思考がないらしい。
あと、日頃の言動が躊躇させるのだ。口を開ければ人の悪口(あっこう)ばかり。これでは、気持ちよく仕事はできないし、自分のことも影でああ言っているのだろうと思う。そんな人の頼みごとを快く受ける人は、よほどのお人好しか、仕事への責任感からだろう。どちらにしても、奇特で良き人だろう。残念ながら、私は横着で嫌な人なので、受けるつもりは全く無い。
さすがに、私が無反応なので、話を変えてきた。
おもちゃメガネ「休みは台湾に行ってきてさー。」
やれ、どこに行った、あれを見た、あれを食べたという話で、さほど面白くもない。
おもちゃメガネ「地下鉄はカードに入金するんだけど、残高がマイナスになっても1回はそのまま通れるんだよ。あれは面白いと思ったね。日本では、改札通してくれないし。」
これくらいだろうか。興味を持った話は。
私「人が多くて、そこでいちいち止めていると効率が悪いとか、そういうのもあるんですかねぇ。」
と、適当に話に付き合う。
一応真面目に解説しておくと、台湾のこのカードというのは悠遊カード(英語名:Easy Card)と呼ばれるもので、日本で言えばSuicaやPASMOのようなもの。交通機関のほか、コンビニ等でも使えるので、日本の交通系ICカードと同じと思って良いだろう。
んで、残高がマイナスという話だが、カード購入時(発行時)にはデポジットがいるので、デポジットから貸越をしているだけである。貸越状態だと利用不可能となるが、再びチャージをして、貸越を解消すれば使えるようになる。
…というのが、正しい話である。
ちなみに、旅行で残高が残ったままだと、最後にチャージしてから2年間有効なので、2年以内に利用するならそのまま。そうでなければ、窓口で手数料を差し引いて残高とデポジットを返してもらうこともできる。ま、残高をマイナスにして、デポジットも返してもらわないでカードを旅の思い出に持ち帰る…というのもアリでしょうけどね。
この辺の話も要領よく説明できないところが、おもちゃメガネらしいところだな。会議とか報告を聞いても、何言ってるかよくわからないこともあるし。
登場人物紹介
- おもちゃメガネ…一応私の上司。現在、第二期政権(上司)の真っ最中。無駄に声が大きく、しょっちゅうボヤく。
- 死んだ人…私の同僚。なんかゾンビのように居なくなったかと思えば復活する。仕事ぶりは適当で、周囲からの意見を聞かず暴走する。よって、この人が担当すると失敗する案件が多い。
- ※…アトピーなのかいつもボリボリと掻いている。人と話しながらもボリボリ。発表しながらもボリボリ。仕事を溜め込む癖があるのに、何でも首を突っ込んで自分のところに溜め込む。そのうち溜め込みすぎると、具合が悪くなってさらに遅延というのを毎度繰り返す。
- VB… 前政権(前の上司)である。この人も仕事を溜め込む癖がある。また、上司だが、部下に仕事を振らずに自分でやろうとする癖がある。技術的なことが好きでそ ういう仕事は熱心だが、マネージャーとして、交渉したり、部下を指導・育成することには、あまり感心がなく、意思決定を求めると、ウダウダ言っていつまで も意思決定をしない癖がある。
- おそ松…東京の本社から異動。早い話、使えないから追い出され、同じ居室の子会社に出向になった。ボソボソと喋り、いるのかいないのかわからないくらい存在感がない。名前は仕事ぶりがお粗末だから。
- 窓際…いわゆる窓際族。これといって特徴がない。
- マル…子会社の直採用組の中では一番古いせいか、中間管理職的な立ちふるまいをしている。が、話が長い割に要点がまとまっていない上に途中からヒートアップすると、キーキー甲高く大きな声で言い始める癖がある。
- 婿殿…婿入りした人。私よりも年齢はちょっと上だが、入社は後だし、微妙な関係である。
- ぽんぽこ…タヌキオヤジだから、ぽんぽこ。腹もぽんぽこタヌキ状態で、タヌキ寝入り…いや、マジ寝を会議中にする。元上司であるが、今は外部の会社に出向。
- DV…1ヶ月程度の間だけ、私の職場に配属された人。どうも、前の事業所では協力会社の人にパワハラをしたらしいとの噂。そのせいか、すぐに関係会社へ出向となり、この職場を去った。(確かに電話の相手が協力会社の時はネチネチ責め上げる感じだった。)
- じぃじ…部長。お口くちゃい。人事屋あがりの外様システム部長。なんか、ビジネス書に影響を受けやすく、受け売りが多い。
- SKY…無駄に声が大きくて、すぐにヒートアップする。
- ヨロ…子会社のシステム業務のヘッド。我々は頭脳であるならば、子会社は手足となって実務を行っている。