1度も使われないシステムに8700万円!

どうやれば、こんな仕事ができるんでしょう? 私には理解不能です。

<産総研>8754万円の電子申請システム 4年間使われず
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090902-00000038-mai-soci

どうしてこんなことが起こったかと言えば、記事によると

 検査院によると、微生物関連の特許出願者は、製品開発にカビや酵母などを利用している製薬会社や食品メーカーが多い。希少な微生物の場合、特許庁への出願とは別に、指定機関にサンプルを提出する「寄託」が必要で、同研究所が受け付けている。

まず、記事を読んでこの時点で、「あちゃー」って思いましたね。

要するに、「微生物関連の特許出願専用」の電子申請システムだった。ということで。

システム化って、基本的には汎用業務をシステム化することで、人手を使うと大変なことを電子化して効率を良くしたり、人手だと受付時間が限られるのを24時間・365日にして、サービス時間を拡大するメリットがあるわけでしょ?

これって、業務プロセスのどこに無駄があって、それを「システム化」という手段で改善・改良することが目的なんですよね。

なので、普通は「特許出願全般」を電子化して、多くの人に使えるようにすべきことなんですね。わざわざ専用にする必要もない。しかも、記事には「寄託」というサンプル(=現物)を提出しなければいけないのだから、電子申請したとしても結局は、現物を研究所に送付するのは同じですよね。

だったら、専用システムで行う必要がないことは明白だと思うんだけど。

もっと言えば、特許に限らず、ありとあらゆる「申請業務」のためのシステムを作り、その中のワークフローを組めばいいわけですよね。例示するなら、「微生物関係の特許」とか、「特許全般」とか、「旅券申請」とかさ。で、それぞれに所轄官庁に申請情報が流れて、許認可の判断をして・・・と、各申請によって判断や処理が入るでしょうが、その情報の流れを作るのがワークフローなわけで。

うちの会社の場合、今は色々なシステム上でワークフローがバラバラに行われています。人事関係だと人事関連のシステム上で、一部の部(全社単位の部)ではグループウェア上でワークフローが流れたり。

ただ、これもワークフロー関係のシステムで統一化してコストを減らそうとしています。将来的には社則制定・改正、予算稟議なんかも、これに載せる方向なんですね。

会社と国レベルは同じではないにせよ、こうすることで電子行政をワンストップで提供できて、利用者にも優しいし、システムの構築・維持・管理コストも低減できると思うんだけど。

・・・と、ベラベラと言いたいことを書きましたが、記事を読み進めると、

 行政手続きのオンライン化を進める政府の「e-Japan重点計画2002」に基づき、同研究所は経済産業省の要請を受け、寄託業務の電子申請システムを開発。05年3月から運用を始めた。

要するに、業務を改善・改良するための手段としてのシステム化ではなく、システム化そのものが目的になってしまっていたんですね・・・。(手段の目的化)

研究所のシステム担当者も、要請を出した経済産業省の担当者も何を考えていたんだ?と。

経済産業省の担当者やe-Japan重点計画2002の推進役もどうして、省庁間の調整をしようとしないわけ? もっと言えば、特許庁と研究所くらいは「特許つながり」で比較的、容易に調整できたんじゃないんですか?

ただ、記事の最後の部分は少しだけ補足を。

 しかし電子申請には電子証明書の取得とカードリーダーの購入が必要で、サンプルそのものを提出する手間は同じだった。4年間に申請は約4万件あったが、電子システムによる申請は1件もなかった。

まず、電子証明書やカードリーダーの購入は、政府関係の電子申請にはどれも共通だと思います。なので、このシステムに限ったことではないと思います。

恐らく記者は「電子証明書やカードリーダーの購入」がネックで普及しなかったと書きたいのでしょうが、これは、ある意味、仕方がないことなんです。申請者が別人に成りすますのを防ぐためのものですから。

ただ、政府が本気で電子政府を実現しようとするなら、電子証明書やカードリーダーの購入に補助金を出したり、これらの導入の説明やPRを行ったり、導入支援サービスを提供すべきだと思います。あまり積極的にこうしたことをやっているとは思えません。人手がかからない仕事になると、人員をが減らさなくてはいけなくて、組合あたりから反発を食らうからやりたくないのでしょうか。

批判すべきは、「専用システム」の構築・維持・管理を決めた体質ですよね。その背景に省庁間・行政法人間で縦割りがあるだろうし、それを仲介したり、調整する仕事をしていないことがあげられるでしょう。

e-Japan重点計画の中で「電子政府を目指す」というプロジェクトを進めるなら、そういう省庁間・行政法人間の調整をする仕事は回避できないんですけどね。どうしても役所同士の利害で動かないならば、最後は政治の力で、強制的にでも動かすべきところなんですが。

繰り返しになりますが、この事案の場合、あるべき姿は汎用的な申請システムにして、省庁を問わず、ワンストップでサービス提供をすることだと思います。こうすれば、8700万円が2億円になったとしても、複数の省庁で8700万円がかかるよりも、はるかにコストダウンができますから。

利用者にとっても、省庁によって、システムの挙動が違ったり、インターフェースが異なると使いにくくなるものです。統一してしまえば、利用者にも優しいと思いますが、そういう国民本位の視点はないのでしょうね・・・。

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