総選挙・マニフェストに思う
あんまり真剣にマニフェストの比較をしたわけじゃないけど、メディアの比較を見る限り、どこも大差がないように感じるんだよね。
ただ、マニフェストを巡る動きでは、気になることが。
先月、民主党がマニフェストらしきものを公開したのに、「これはマニフェストじゃない」と言い出したこと。
それから、FTA締結のトーンダウン。
麻生首相のことを「ブレてる」と非難してたけど、お前らもブレてるだろ。と、突っ込み。他にも給油問題のあたりも、民主党の弱点が露呈した感じがする。
それから、もっと気になるのはマニフェストの捉え方。
どうも世間一般的には、「政権を取った場合に(衆院の任期満了となる)向こう4年間の(財源などの裏づけのある)公約」と受け取っている。
まー、確かに間違いではないと思うのだが、4年先の話だけをしているようで、いいのだろうか?と、私は思う。
世の中の問題が4年で解決できるならいい。でも、もっと長期になるような事案もあるはずで、あまりにも4年にこだわると、近視眼的にならないか?と思うのだ。
マニフェスト以前に日本と言う国を、どういう国にしたいと考えているのか。そのビジョンを示して欲しいと思うんだよね。そのビジョンを具現化するために直近の4年では、こういうことをします・・・って感じに落とし込んで欲しいな・・・と思うわけで。
で、ビジョンと言えば、また「安心で安全な国家」とか、こういうスローガン的な内容に終始するんだろうな・・・って思うんだけどさ。
例えば、私なら、「ものづくり国家」からの脱却を考える。モノからサービスへの転換を急ぐ。
どうも、日本人は「ものづくり」という言葉が好きだと思う。確かに、日本のものづくり(製造業、伝統工芸などのものづくりも含むだろう)は素晴らしいと思う。品質の高さならトップクラスかもしれない。
でもね、私は、新興国も日本レベルに確実に近づいてきていると思う。
「日本の製品は素晴らしい。でも、少しレベルが違う程度なら、(費用対効果を考慮したら)他の国の製品でも充分だよね。」
って考えも出てくると思う。その費用対効果を考慮した上で、やや質が劣る程度は既になってきていると思う。
例えば、液晶テレビ。ソニーやシャープ、パナソニックの製品は素晴らしい。でも、少し劣るけど安いサムスンの製品を天秤にかけたら、どちらを選ぶだろうか。
映像にこだわる人なら、日本製を選ぶだろうが、普段使い程度の人ならサムスンを選んでもおかしくない。
これが現実。
そうすると、価格競争力がない分、日本の製品は売れなくなってくると思うんだよね。
だとしたら、いつまでも、「ものづくり国家」に縛られちゃいけないと思う。
「モノからサービス」への産業構造の転換が必要なのだが、遅々として進んでいない。私が勤める会社は製造業だから、これは痛い話なんだけど、日本の国力として考えた場合、避けて通れないと思うんだよね。
で、そのためにサービス産業をどうやって育成するか、どうやって世界と戦っていくのか、ものづくりからの転換推進をどう進めるか・・・と課題も出てくる。そこに、どういう政策を打つかがミソになるはずだ。
そういう国家が目指すべきビジョンがあって、その夢物語を現実にするためのストーリーがマニフェストでなくちゃいけないと思うんだよね。
単に4年間の間に実行することを羅列するだけじゃ、視野が狭いと思う。それだけじゃ、国家国民は安定的・持続的な繁栄をしていくことができないと思うんだよね。
最初に書いたFTA締結のトーンダウンも結局、従来型の農業政策の延長で、保護しまくって金バラ蒔き型だろう。
私なら、国際競争力強化という意味で、大規模農業への転換を進めて、細かく区切られていない畑から、大規模な畑にして機械を入れやすくすることで、人件費や手間が少なく済む農業に転換する。例えば、会社法人が参入を容易にできるように法令改正をしたり、農地売買が円滑にできるような法令改正もあるだろう。
他にも高収益型なら、水耕栽培による作物工場の研究、実用化なんてこともあるだろうし。(このノウハウをうまく使えば、食糧問題の解決にもなるかもしれない。)
それから、FTAを締結することで、日本の質の良い農産物を世界に輸出して、品質で戦うこともできると思う。事実、りんごや米が中国に高値だけど輸出した実績だってある。政府が輸出振興・支援を行うことで、農家の収益を上げるという「サービス提供」による支援に転換することもできると思う。金をあげるだけが支援じゃないってことで。
農業政策をとっても、「世界と互角に戦える農業」というビジョンと、その柱に「高収益体質化」とか「輸出振興」を掲げ、そのために、どういうことを実行する・・・ってことを書いて、抵抗する農業関係団体を説得して見せれば「民主もやるな。」と評価できたんだけど。
それが、抵抗を受けてあっさりトーンダウンするんだから、ガッカリもいいところですよ。
あと、全体的に言えるのは財源の裏づけが甘い。
「無駄をカットして捻出する」
なんてのは、具現性に欠ける。どんな無駄をカットした結果、どれだけの金額が浮いたと試算できて、それを○○の政策実行に充当すると書かなければいけないだろう。
ましてや、無駄のカットが官公労べったりの政党にできるとは思えないのだが。それは支持母体の利益に反するわけなんだし。
だから、具現性に欠ける内容で国民を欺くのだろう。
マニフェストという言葉が出てきて、一歩進んだ選挙のように見えるが、私の目には、政治的に進んだ国のマネをした、ままごとにしか見えない。
所詮は、その程度の政治レベルであり、その程度の政治レベルを作っているのは、他ならぬ我々国民なのだ。政治は民度を映す鏡である以上、仕方ないのかもしれない。我々が、もっと勉強をして、変わらなければいけないのだ。