重大事件の公訴時効撤廃か
逃げ得を許さないためにも重大事件の時効撤廃に賛成します。
殺人など重大事件、時効を撤廃含め見直し…法務省
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090103-00000043-yom-pol
時効の存在理由はネタ元の記事では、
公訴時効は犯罪が終わった時点から一定の期間を経過したら起訴できなくなる制度で、〈1〉時の経過で遺族や被害者の処罰感情が薄れる〈2〉証拠が散逸して公正な裁判の実現が難しくなる〈3〉捜査機関が長期捜査に伴う様々な負担から解放される--などが、時効の存在する理由とされている。法務省によると、2007年中に時効が成立した殺人事件は58件に上る。
だけど、被害者や遺族にとっては、時間が経っても、処罰感情なんて薄れるわけがないんですよ。薄れるのではなく、乗り越えてそれでも生きていかなくちゃいけないから、何とか消化しているんだろうし。
また、1978年に発生した東京・足立区の女性教師殺人事件で、公訴時効が成立した2004年8月に警察に自首したような事件もありました。
まさにこれは「逃げ得」だと思うのです。本来、逮捕・起訴され、刑務所で罪を償うべき人間が、時効成立後にちゃっかり出てきた。この理由は、道路拡張のための区画整理で家が取り壊されて埋めていた遺体が発見されて事件が発覚すると思ったからという。
もし、重大犯罪の公訴時効が無ければ、この男は逮捕され、罪を償うことになっていたでしょう。
時効が成立してから、出てきた犯人を被害者遺族はどう思うでしょうか?
私がその立場なら、私刑でも与えたいと思いますよ。被害者や遺族の処罰感情なんて薄れないですよ。むしろ、余計に腹が立つと思う。逃げ得なんですから。
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なお、この事件については、公訴時効が成立しているため、殺人罪として逮捕もできなきゃ、起訴もできないのですが、民事上の損害賠償請求を行いました。
東京地裁は、「殺人」と「遺体の隠匿(隠すこと)」に分離して判断。殺人は不法行為(殺人)をしてから20年(※)が経過したために民事上も時効が成立して請求不能と判断。遺体を隠匿したことについては、たびたび遺体を移動させていたから、最後に移動させた時から20年を経過していないと判断しました。
一方、東京高裁では、地裁判決を破棄した上で、殺人についても損害賠償請求を認める判決を出しました。
※民法第724条 (不法行為にによる損害賠償請求権の期間の制限)
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
地裁は、この条文を読んだとおり解釈したわけです。
高裁は、「著しく正義・公平の理念に反する」場合など、一定の条件下では除斥期間の効果は排除されるという判断を下しました。なお、これは除斥期間を認めない初の判例なんです。
※除斥期間・・・時効の一つ。条文では明文化されていない。例に示した民法第724条も除斥期間と考えられている。消滅時効と似ているが微妙に異なる。
※除斥期間の効果は排除される・・・回りくどい言い方をしているが、除斥期間が過ぎたとは判断しないということ。厳密に言えば、除斥期間の進行の停止(つまり一時停止)を認め、その上で、除斥期間に満たない(=20年は経過していない)から権利は消滅していないということ。
この判断は、注釈をたくさんつけないと理解しにくいくらい、かなり苦労して法的解釈をして、何とか被害者感情に答えようとした画期的な判決なんだよね・・・。