法の暴走

最近、世の中の動きが本当に不穏だな…と感じることがある。

一つは、著作権法の改正案の話題。これは、現在、権利者が「権利侵害だ!」と言って初めて犯罪が成立する親告罪であるが、これを非親告罪化しようとするもの。

二つ目は、児童ポルノの単純所持を罪とする問題。

三つ目は、taspoの登場。

まず、著作権法の非親告罪化は、簡単に言えば、権利者が黙認しているのに警察の気分次第で取り締まることになるのではないか…という懸念がある。

最近のインターネットの様子を見ていると、初音ミクに代表されるようなユーザーがクリエイターとなり(=権利者となり)作品を公開し、また、公開された作品を他の人がパロディやアレンジしてさらに盛り上がるという構図がある。

この場合、初音ミクというソフトを発売している会社が何も言わないのに、なぜか警察が取り締まるという事態が発生するのではないか。という懸念があるし、そうした心配があることで、ユーザーが萎縮して、良い作品が世に公開されないことは、文化発展の面で大きな損失になる。

日本は、ものづくり国家と言われているが、中長期的には産業構造を変えていく必要がある。モノからサービスへの変革が必要で、そのためには、自由に作品が流通する一方で、対価がきちんと払われる社会基盤(ルール)が必要になると思う。

今の仕組みでは、作品を使おうとすると権利者との調整が大変だから、この辺も見直す必要があるだろう。(これは、また別の機会に。)

二つ目の児童ポルノの単純所持を罪とする問題。

これは、先の問題よりももっと恐い。

単純所持を罪としてしまうなら、私が、悪意ある人間なら、嫌いな人間に児童ポルノと思われるモノをカバンに入れておいて、警察に告発すれば、その人間は罪に問われる。

また、これには、成人がセーラー服などを着て児童を演じるものも「準児童ポルノ」として規制対象とするそうで、そうなれば、現在、流通しているグラビアタレントのDVDや写真集も「準児童ポルノ」という位置づけになってしまう。

そうすると、私は犯罪者になってしまう。もちろん、タレントは20歳を超えている人だと認知していても、定義が曖昧なまま法として成立すれば、日本中に犯罪者ができてしまう。

児童ポルノについては、現行の枠組みでも充分対応できるはずだ。

児童に被写体となることを強要することは児童福祉法なりで規制できるし、出版物などについても、わいせつ物陳列などで規制できるだろう。

法で規制を強めれば、地下深くへもぐるというのは、誰でも想像できることだろう。

例えば、暴力団問題。暴力団の規制を強めた結果、一般企業と区別がつかない活動をしているケースもある。また、指定暴力団系列にならないように意図的に組織構造を操作していたり、規制の目をかいくぐることも起きている。

適当に泳がせておいて、警察が睨みをきかせて「カタギ(一般人)に手を出すなよ。そうでなければ、ある程度は目をつぶってやる。」という程度のほうが、囲い込めたのかもしれない。

児童ポルノ規制も強化すれば、それこそ、裏社会の商売の種になるだろう。

漫画でさえ準児童ポルノになるのだから、漫画家でも雇ってエロい漫画を描いて闇ルートで売れば資金になる。規制されているものを流通させるのだから、余計に高価になり、旨みが増すだろう。

また、規制が強くなればなるほど、爆発する人間も出てくる。

ロリ顔にセーラー服を着た子が風俗店にいてサービスを受けていたからこそ、性犯罪を犯さずに済んだ人がいたとする。法規制が強化されて、ロリ顔だが、普通の服では満たされなくなった人が暴走して、本物の中高生を強姦する可能性だって出てくる。

もっと恐いのは、女性を拉致し、強姦し、妊娠・出産させ、生まれた子が男なら殺されるか、臓器を取るために育てられ、臓器を取ったら用済み。女なら、ロリの道具として被写体を強要され、姦淫され、大人になっても普通の風俗店なり、裏風俗にでも売り飛ばされるだろう。ただ欲望のための道具として生かされるという事態も想定できなくはない。なぜなら、規制が強化されて金になるからだ。今までは、ここまでのリスクに対してリターンがペイしなかったが、法規制で金になればペイするかもしれない。そうなれば、本当にこういうことをやりだす可能性は否定できない。

適度にガス抜きがあることで抑制されていたものが、押さえ込んだ結果、爆発するというのは、良くある話だろう。

何よりも一番恐いのは、警察が気分次第で逮捕できてしまう。ということを、法律で定めることなのである。著作権法の非親告罪化や児童ポルノの単純所持および規制対象の拡大はそうした要素を含んでいる事案だと思う。

さらに恐いのがtaspoである。

嗜好品のタバコを買うために、taspoという国のお墨付きとも言えるカードが必要になる。これって、嗜好品を規制する序章につながるのではないかという心配がある。国家が嗜好品の購入に関与するということの空恐ろしさ。

成人であることを確認できればいいのなら、自動販売機を廃止して、店頭で身分証明書を見せて買うようにすればいい。

これが、世間で煙たがられるタバコだから、批判意見は少ないのだろうが、酒に同じような仕組みが適用されたら世の人はどうなるのだろうか。

先に話題とした、児童ポルノ(ロリ)が規制され、次にエロ全般が規制され、さらに嗜好品が規制され、どんどん拡大していくことが恐ろしいと思う。

もちろん、青少年の健全な育成のために児童ポルノが流通することも、未成年がタバコを購入できないことも必要なことだし、それに対して法で規制すること自体は問題ないと思う。だが、あまりにも乱暴なやり方に私は反対しているだけである。

(追記)
日弁連も児童ポルノの見直しについて意見書が出ています。(2003年)
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/2003_09.html

ここでは、コミック規制についてやインターネットでの流通の問題も書かれています。2003年の時点で指摘されていることばかりです。

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